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小説

れんげ荘のあらすじ(ネタバレ含む)・感想【書評】

本記事は2009年にハルキ文庫より出版された、群ようこの「れんげ荘」について紹介します。

「れんげ荘」は月十万円で、心穏やかに楽しく暮らそう! と決意し、ささやかな幸せを求める45歳の女性を描く長編小説。

れんげ荘物語として、「働かないの」「ネコと昼寝」「散歩するネコ」という続編の単行本も出版されていますよ。

こんな方におすすめ

  • れんげ荘がどんなお話か知りたい方
  • 読みたいけど時間がないので簡単な内容を知りたい方
  • れんげ荘を読んだ感想が知りたい方


れんげ荘のあらすじ(ネタバレ含む)

主人公のキョウコは都内の北西部にある自宅で母親と暮らしながら、大手広告代理店に勤める45歳の独身女性。

母は家のことは何でも完璧にこなす専業主婦ですが、見栄っ張りで世間体ばかり取り繕う母にキョウコはうんざりしています。

父親が働きすぎで亡くなったのも、母親が本職の他にアルバイトまでさせていたからだと思っていました。

会社でのキョウコは、仕事をテキパキとこなすので順調に昇進し、傍目からは仕事のできるマスコミ関係の女性と見られています。

しかし接待漬けの仕事、母親からの愚痴を聞かされる毎日に疑問を抱くようになってきます。

そんなある日、キョウコはTV番組で華やかな生活も会社も辞め、月に十万円で生活を送っているというアメリカ人の女性を見ました。

この番組をきっかけきに、キョウコは生活を切り詰めて会社を辞めて家を出る日を夢見ます。

そこへ別居していた兄一家が、年老いた母を心配して同居を申し出てきたのです。

キョウコはこのチャンスを逃さずに、会社を退職しアパートを見つけて一人暮らしをはじめることに。

家賃3万円の「れんげ荘」で一人暮らしを開始

アパートで一人食事をする女性

高給取りで退職金も出たので、ある程度の貯金はあるとはいえ無職で生活していくのですから住居費を抑えたかったキョウコ。

見つけたのは築40年を超える、家賃3万円の「れんげ荘」という名のアパートでした。

キョウコはこのアパートを気に入り、引っ越してくることを決めました。

れんげ荘には、

1号室にはササガワという若い男性

3号室にはクマガイという女性

奥の一番小さな部屋にはコナツという若い女性

が住んでいます。

トイレとシャワー室は共同ですが、管理人さん親子がいつも掃除してくれているので清潔さは保たれています。

そんなアパートの六畳の小さな部屋で、キョウコの預金者生活がはじまったのでした。

引っ越しの挨拶に隣を訪れると、クマガイという女性は気さくな感じの良さそうな人。

他の二人は不在だったので、キョウコにはもう他に何もすることがありません。

何もしなくても良い母の愚痴も聞かなくて良いという開放感に浸っていたキョウコでしたが、その母から引っ越し先へ遊びに行きたいという連絡が入りました。

苦手な母の襲来

古いアパートに洗濯物が干されている

どうしようかと迷っているうちに、勝手に母はキョウコの家にやって来てしまいます。

世間体を何より気にする母はキョウコの住むアパートを見て「こんな所に住む人間は、ろくな者じゃないと」と激怒しました。

母が帰ったあとクマガイさんに出くわしますが、気付かなかったフリをしてくれる彼女に感謝するキョウコ。

少し経ったころ、キョウコはクマガイに誘われてサイトウが働く小料理屋に出かけたのです。

小料理屋での食事代も、雰囲気のあるお店で飲んだ珈琲代もクマガイが出してくれました。

身に着けている服もオシャレで、いくらでも安いコーヒーが飲めるのに、丁寧に入れた少し値の張る珈琲を楽しむことを知っている。

そんなクマガイの一面を知った、楽しい夜でした。

ないものねだりが襲ってくる

薄暗い部屋で座り込み、頭を抱える女性

せっかく何もしなくて良い生活になったのに、真面目なキョウコは「何をすべきか」を考えてしまいます。

頭の中も行き詰まってきましたが、部屋の中もカビの襲来を受けて大変な事になっていました。

気分が落ち込んだキョウコは、友達のマユちゃんを家に招くことにしました。

古いけど嫌な感じがしないとアパートを褒めてくれたマユに悩みを打ち明けてみると、「真面目に無職をやろうとし過ぎ。考えたくなければ考えなくていいのよ」とアドバイスを受けます。

カビの襲来が収まると、今度は蚊の大群に襲われるキョウコ。

れんげ荘での生活は、自然との戦いです。

そんな戦いを繰り広げていたとき、兄から電話があり姪のレイナの誕生会に招待されました。

幸せへの第一歩

朝日に向かって両手を大きく広げる女性

母のことが気になりましたが、可愛いレイナのためにプレゼントの北欧柄バッグを持って誕生会へ向かいます。

レイナはキョウコの家に遊びに来たいと言いますが、いい顔をしない相変わらずの母でした。

レイナの誕生会も無事に終わり、季節は隙間風との戦いの冬へと変わったころ隣室からドーンという鈍い音が聞こえてきました。

クマガイが脳梗塞で倒れたのです。

1月の終わりに退院してきたクマガイから部屋に招かれ、色々な話をした時にキョウコがクマガイの服装を褒めると整理した洋服をもらって欲しいと頼まれます。

クマガイさんから素敵な服をたくさんもらったキョウコは、隙間風が吹くのも忘れ温かい気持ちで一杯になったのでした。

クマガイから貰った服がキョウコのお気に入りとなり、季節も良い時期を迎えたころ姪のレイナが遊びに来ること。

レイナから「私、ここ好きだよ。うまくいえないけど、住んでるって感じがする」と言われ、年齢など関係なく自分を理解してくれる人が増えたとキョウコは嬉しく感じます。

物語はあらゆる拘束から解き放された生活をして一年経った所で終わっていますよ。

れんげ荘を読んだ感想

レンゲ草の花

この本を読んで、無職の状態で月10万円生活を始めたキョウコに潔さを感じるとともに、多くの物を抱え込んでしまう自分の生活を反省させられます。

自分にとって本当に大切な人、モノはどういうものかを考える良いきっかけとなる小説。

そして、老後のことを考えると節約は必須となりますが、節約するなかでもクマガイさんのように心の豊かさは忘れずにいたいと思わせてくれる作品でした。

質素な暮らしにも、泥臭い大変なことがたくさんあり、どんな暮らしや状況でも苦労はつきものだと気づきました。

続編シリーズにてキョウコがこれからどうなるのか、母親との関係は変化するのか、が描かれているので読むのが楽しみです。

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